青空文庫

「藤棚の陰から」の感想

藤棚の陰から

ふじだなのかげから

初出:「中央公論」1934(昭和9)年9月

寺田寅彦22
作家の日常学問的考察自然と人間の冥通分析的叙情的懐古

書き出し

一若葉のかおるある日の午後、子供らと明治神宮外苑をドライヴしていた。ナンジャモンジャの木はどこだろうという話が出た。昔の練兵場時代、鳥人スミスが宙返り飛行をやって見せたころにはきわめて顕著な孤立した存在であったこの木が、今ではちょっとどこにあるか見当がつかなくなっている。こんな話をしながら徐行していると、車窓の外を通りかかった二三人の学生が大きな声で話をしている。その話し声の中に突然「ナンジャモン

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