青空文庫

「空想日録」の感想

空想日録

くうそうにちろく

初出:「改造」1933(昭和8)年3月

寺田寅彦27
動物描写文明開化虚構と真実分析的孤絶

書き出し

一白熊の死探険船シビリアコフ号の北氷洋航海中に撮影されたエピソード映画の中に、一頭の白熊を射殺し、その子を生け捕る光景が記録されている。果てもない氷海を張りつめた流氷のモザイクの一片に乗っかって親子連れの白熊が不思議そうにこっちをながめている。おそらく生まれて始めて汽船というものに出会って、そうしてその上にうごめく人影を奇妙な鳥類だとでも思ってまじまじとながめているのであろう。甲板の手すりにもたれ

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