青空文庫

「田丸先生の追憶」の感想

田丸先生の追憶

たまるせんせいのついおく

初出:「理学部会誌」1932(昭和7)年12月

寺田寅彦16
作家の日常内省回顧的奇人描写懐古静謐

書き出し

なくなってまもない人の追憶を書くのはいろいろの意味で困難なものである。第一には、時のパースペクティヴとでもいうのか、近いほうの事がらの印象が遠い以前のそれを掩散したがる傾向がある。第二には、近いほうの事を書こうとすると自然現在の環境の中でのいろいろの当たりさわりが生じやすい。第三には、いったいそういうものを書こうというような気持ちにもなりにくいものである、いかにも心ないわざだという気がするのである

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