青空文庫

「「手首」の問題」の感想

「手首」の問題

「てくび」のもんだい

初出:「中央公論」1932(昭和7)年3月

寺田寅彦15
学問的考察芸術論身体描写分析的学術的

書き出し

バイオリンやセロをひいてよい音を出すのはなかなかむつかしいものである。同じ楽器を同じ弓でひくのに、下手と上手ではまるで別の楽器のような音が出る。下手な者は無理に弓の毛を弦に押しつけこすりつけてそうしてしいていやな音をしぼり出しているように見えるが、上手な玄人となると実にふわりと軽くあてがった弓を通じてあたかも楽器の中からやすやすと美しい音の流れをぬき出しているかのように見える。これはわれわれ素人の

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