めのうばん
書き出し
1ミツシヱルは魚ばかり食べたがる女であつた。魚屋の前を通ると、牡蛎籠の上に一列に並んでゐるレモンの粒々に、鼻をクンクンさせたり鮫の白い切り口を、何時までも指で押してみたりしては買へもせぬ癖に、何か口の中でブツブツものをいひながら、立ちつくしてゐることがあつた。ミツシヱルは南フランスの生れで、髪は南国風に黒つぽい色をしてゐる。「小さいお嬢さん!私しのびなき」寒子のアパルトへ来ると、かうして泣いて見せ…
19双之川喜41さんの感想
パリの 街並みの 描写がよい。 群像を 描きたかったのなら 登場人物が 少なすぎるし そうでないとしたら 多すぎるような 気もした。 戸惑いを 隠しているような 筆致であると感じた。