青空文庫

「からすうりの花と蛾」の感想

からすうりの花と蛾

からすうりのはなとが

初出:「中央公論」1932(昭和7)年10月

寺田寅彦23
学問的考察日常の非日常自然観察分析的軽妙静謐

書き出し

ことしは庭のからすうりがずいぶん勢いよく繁殖した。中庭の四つ目垣のばらにからみ、それからさらにつるを延ばして手近なさんごの木を侵略し、いつのまにかとうとう樹冠の全部を占領した。それでも飽き足らずに今度は垣の反対側のかえでまでも触手をのばしてわたりをつけた。そうしてそのつるの端は茂ったかえでの大小の枝の間から糸のように長くたれさがって、もう少しでその下の紅蜀葵の頭に届きそうである。この驚くべき征服欲

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