青空文庫

「舞馬」の感想

舞馬

ぶま

初出:「新青年」1927(昭和2)年10月号

逸馬20
下町風土奇人描写家族不和叙情的軽妙

書き出し

1植峰——植木屋の峰吉というよりも、消防の副小頭として知られた、浅黒いでっぷりした五十男だった。雨のことをおしめりとしか言わず、鼻のわきの黒子に一本長い毛が生えていて、その毛を浹々と洗湯の湯に浮かべて、出入りの誰かれと呵々大笑する。そうすると、春ならば笑い声は窓を抜けて低く曇った空に吸われるであろうし、秋ならば、横の露路に咲いたコスモスのおそ咲きに絡まる。「入湯の際だがね、このコスモスてえ花は——

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