青空文庫

「滝口入道」の感想

滝口入道

たきぐちにゅうどう

初出:「読売新聞」1894(明治27)年4月16日~5月30日

高山樗牛163
懐古歴史的人物の描写歴史的背景厳粛叙情的

書き出し

第一やがて來む壽永の秋の哀れ、治承の春の樂みに知る由もなく、六歳の後に昔の夢を辿りて、直衣の袖を絞りし人々には、今宵の歡曾も中々に忘られぬ思寢の涙なるべし。驕る平家を盛りの櫻に比べてか、散りての後の哀れは思はず、入道相國が花見の宴とて、六十餘州の春を一夕の臺に集めて都西八條の邸宅。君ならでは人にして人に非ずと唱はれし一門の公達、宗徒の人々は言ふも更なり、華冑攝※の子弟の、苟も武門の蔭を覆ひに當世の

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