青空文庫

「少年」の感想

少年

しょうねん

初出:「中央公論」1924(大正13)年4、5月

奇人描写文明開化日常の非日常自己認識叙情的孤絶幽玄

書き出し

一クリスマス昨年のクリスマスの午後、堀川保吉は須田町の角から新橋行の乗合自働車に乗った。彼の席だけはあったものの、自働車の中は不相変身動きさえ出来ぬ満員である。のみならず震災後の東京の道路は自働車を躍らすことも一通りではない。保吉はきょうもふだんの通り、ポケットに入れてある本を出した。が、鍛冶町へも来ないうちにとうとう読書だけは断念した。この中でも本を読もうと云うのは奇蹟を行うのと同じことである。

2016/11/26

靜夜さんの感想

少年時代の保吉の想像力の豊かさと、また、物事の本質を真摯に受け止める純粋さに心ひかれます。 海は青色ではない。確かにそうだ、と思わず頷かずにはいられませんでした。海水浴に行ったことのある人間ならばわかることであると本文中にも言及されていましたが、確かに海水浴で近づく海は遠くは青くとも、間近なところは青くはないのです。 少し考えればわかることなのに、不思議と言われるまで気づかない、海は青いものと思っている、なんだかはっとさせられた心地でした。 保吉少年の不幸は、彼の見出だした真理は常識に適わぬと大して周りが深く受け止めてやらなかったことのように想いました。

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