青空文庫

「親子」の感想

親子

おやこ

初出:「泉」1923(大正12)年5月

有島武郎54
下層階級の描写季節の移ろい孤絶家族不和回顧的憂鬱静謐

書き出し

彼は、秋になり切った空の様子をガラス窓越しに眺めていた。みずみずしくふくらみ、はっきりした輪廓を描いて白く光るあの夏の雲の姿はもう見られなかった。薄濁った形のくずれたのが、狂うようにささくれだって、澄み切った青空のここかしこに屯していた。年の老いつつあるのが明らかに思い知られた。彼はさきほどから長い間ぼんやりとそのさまを眺めていたのだ。「もう着くぞ」父はすぐそばでこう言った。銀行から歳暮によこす皮

1 / 0