青空文庫

「椎の若葉」の感想

椎の若葉

しいのわかば

初出:「改造 第五巻第七号」1924(大正13)年7月

葛西善蔵19
下宿生活自己認識芸術家描写内省的回顧的

書き出し

六月半ば、梅雨晴れの午前の光りを浴びてゐる椎の若葉の趣を、ありがたくしみ/″\と眺めやつた。鎌倉行き、売る、売り物——三題話し見たやうなこの頃の生活ぶりの間に、ふと、下宿の二階の窓から、他家のお屋敷の庭の椎の木なんだが実に美しく生々した感じの、光りを求め、光りを浴び、光りに戯れてゐるやうな若葉のおもむきは、自分の身の、殊にこのごろの弱りかけ間違ひだらけの生き方と較べて何と云ふ相違だらう。人間といふ

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