青空文庫

「一兵卒」の感想

一兵卒

いっぺいそつ

田山花袋33
喪失と記憶戦争描写病中苦悩社会批評内省的叙情的鬱屈

書き出し

渠は歩き出した。銃が重い、背嚢が重い、脚が重い、アルミニウム製の金椀が腰の剣に当たってカタカタと鳴る。その音が興奮した神経をおびただしく刺戟するので、幾度かそれを直してみたが、どうしても鳴る、カタカタと鳴る。もう厭になってしまった。病気はほんとうに治ったのでないから、息が非常に切れる。全身には悪熱悪寒が絶えず往来する。頭脳が火のように熱して、顳※がはげしい脈を打つ。なぜ、病院を出た?軍医があとがた

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