青空文庫

「黒き素船」の感想

黒き素船

くろきすぶね

初出:「天鼓 第十号」北上屋書店、1905(明治38)年8月23日

書き出し

黒き素船を透かし見れば、砂にしやがめる影とまがひ、沖の小島の薄き見れば、人の思ひに沈むけはひ、空に住へる月を仰ぎ、寂びしわが身の魂と見たり。われはそのまままなこ閉ぢて、消ゆる世界を今ぞいだく。浮けよ、沈めよ、千々のなやみ、千々の悲み、身をば乗せて。苦なるいのちは——繁き矢なり——積みて重なる夢の小船。さして行くへをこゝに問はじ、この夜、この時われは活きん。底本:「日本の詩歌26近代詩集」中央公論社

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