青空文庫

「鵠が音」の感想

鵠が音

たづがね

01 鵠が音

01 たづがね

折口春洋101

書き出し

昭和十九年——五十首——この日頃一暁の寒き真闇に別れたるかの下士官は、到りつらむか雪ほのに見えてしづもる向ひ山。暗きに起きて、兵を発たしむ健やかに征きてかへれと告げて後、たち征きにしが、まだ暗き営庭若くして心真直に征きにける伍長一人を心にたもつこの日頃二きほひ来し学徒も今はおちつきて、おのもしづけき兵となりゆく近々と山の残雪のさびしきに、夕方早く雨となりたりこの日ごろ。深く身に沁む戦ひの夢に目ざめ

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