さんがくじょうど
書き出し
いまや白衣をぬいで浄光をはなつ山々、しずまりたもうかたを拝んで筆をとる。秩父おろしが枯葉をまいて、思いは首筋から遠く天外をかけめぐる。そこにまたしてもかずかずの、すぎし山間遍歴のあとがあらわれる。そしてなんたるしみじみしい景色だ。ゆったりした景色だ、清らかな景色だ。ゆらい老人は、むかしを語るをこのむという、そうかも知れない、が、なんでもむかしのものはよく、いまのものはわるいなどとは、そこにたしかに…