青空文庫

「岸辺」の感想

岸辺

きしべ

初出:鴉「詩学」1964(昭和39)年1月号

書き出し

岸辺冬の日がかんかん照つていた川岸の枯草の中から首だけ出して八十九歳の老人が釣をしていた釣竿をもつたまま水に映るちぎれ雲の間をおよぐ冬の魚たちと昔話をしながら老人は死んでいたちかちかと日はかたむいていた一匹の紋白蝶がよたよたと向う岸に渡つていつた魚たちが老人を呼んでいた赤い小さなうきがかすかな波紋をおこして沈んだり浮いたりしている不在の人山すその丘に古い観音堂がたつているそこに住む僧を訪ねた新茶を

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