ふたりのセルヴィヤじん
書き出し
リヨンからパリに移ったのは冬の最中であった。停車場前から古い汚れたタクシーに乗って、オーステルリッツ橋を渡った時、遥の河下にノートル・ダムの黒い影が、どんより曇った朝の空に、寒そうに立っていたのが今も目に浮んで来る。向いの植物園の、葉の落ち尽した木立も、木立を囲む鉄柵も、固く黒く、とげとげしく見えた。青葉のパリしか知らなかった私には、此の蕭条たる眺めがひどく心細かった。今、あらゆる劇場で、モリエー…