青空文庫

「汝自身を知れ」の感想

汝自身を知れ

なんじじしんをしれ

ベルンにて

ベルンにて

辰野4

書き出し

大正十年の七月、或日の午後、僕は山田珠樹と並んでスイス、ベルンの街をぶらぶら歩いていた。スイスに来て時計を買うのも少々月並すぎる話だが、モン・ブランやユングフラウに登って涼むのも、時計屋をひやかすのも、大した変りはないと思ったので、二人は互に第一流の時計屋らしいのを物色して、何か変った時計があったら——ふところと相談しておみやげに買って帰るつもりであった。とあるショー・ウインドーの前に来ると、二人

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