青空文庫

「感傷主義」の感想

感傷主義

かんしょうしゅぎ

X君とX夫人

エックスくんとエックスふじん

辰野10

書き出し

感傷主義——サンチマンタリスム——にも、ぴんからきりまである。最も通俗なのは『金色夜叉』や『不如帰』をはじめ、所謂大衆小説と呼ばるる無数の小説を貫く甘い涙ぐましさとかいうものであろうが、高級なサンチマンタリスムには、『ボヴァリイ夫人』や『感情教育』の如き、凡そ大衆的な涙の味とは逆行する苦笑や憐憫、さては『エディポス王』や謡曲『隅田川』の如き、一つは酷烈な、一つは哀切な運命悲劇の醍醐味もあるだろう。

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