青空文庫

「愛書癖」の感想

愛書癖

あいしょへき

辰野30

書き出し

パリに遊んだ人々は誰でもセーヌ左岸に列んでいる古本屋を決して忘れないだろう。店と云っても、家ではない。唯、セーヌ河岸の石崖の上に、無数の古本の箱が、石崖の続く限り——と云うと少し話が大きくなるが、——サン・ミシェル河岸からヴォルテール河岸に至る七、八丁か八、九丁の間は、高さ一尺、方三尺ばかりの箱に古本を詰め込んだのが数限りなく行列している。二、三間隔きに箱の主がいて、牀几に腰をかけたり、ぼんやり、

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