ゆき
初出:「雪」文芸汎論社、1942(昭和17)年5月4日
書き出し
Sine qua non乖離一十月。秋神の即位。——金鶯一羽、廃園のエルムの樹に通ひはじめる。二道傍の亜灌木にある、水禽の糞。湖からあがる風が、弧を描いて、水霜の葉におちる。青い鶫が食卓にのぼりだすと、聖餐式のやうに澄んだ夜ごとが、展ける…三手帖に一篇※天使園の薔薇※といふ詩を、書きとつた。それから、パピィニの自叙伝を読んだ。そして、ひとりで眠つた。「灰色の靴下を穿いた秋」が、わたしの精神の罅裂の…