こきょうにかえりゆくこころ
書き出し
秋になつて来ると、何がなし故郷がなつかしまれる。村はづれの深山の紅葉とか、それから全体として山や水やを恋するやうな心持が頻りに強く動く。周防の方に私の故郷の村がある。隣村は長門の国になつてゐて、そこに、長門峡、といふ奇勝がある。なんでもA川の上流が、七八里余り渓山の間を流れつづいて、べつだん村落が展けるでもなく、両岸には蒼潤の山が迫り、怪石奇巌駢び立つて、はげしい曲折の水が流れては急渓、湛へては深…
0c2892c2e65fさんの感想
雪舟と作者の故郷山口県との関わりをめぐる作品。いわば小説とも随筆ともとれる小品ではあるが忘れ難い味わいある余韻あふれた名文である。