青空文庫

「四谷、赤坂」の感想

四谷、赤坂

よつや、あかさか

初出:「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月4日~9日

宮島資夫23

書き出し

高力松いかつい石垣が向い合って立っていた。子供の目には恐ろしく高く見える。石垣の上は四角く平らになっていた。昔はぶっさき袴の侍がその上に立って、四辺を睥睨したであろう。石垣に続いた土手は、ゆるい傾斜で、濠の水面まですべっていた。水は青いぬらで澱んでいた。菱の葉が浮いていた。夏は紅白の蓮の花が咲いた。土手には草が蓬々と茂っていた。が、濠端を通る人影はまばらだった。日影の尠い、白ちゃけた道が、森閑とし

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