いっそう
初出:「明星 三ノ二」1902(明治35)年8月
書き出し
わが知己に一人の僧ありき——世を遁れ、行ひすましぬ。ひたぶるに、祈祷を淨樂として、一念これに醉ひぐれたれば、精舍のつめたき床にたちても、膝より下の、ふくだみて、全身、石柱をあざむくに至るまで、ひるまざりき。すべてのおぼえ、うせぬるまでも、そこに佇みて祈り念じぬ。この人の心、われよく識りぬ。こゝろ妬たくさへおもほゆ。彼また吾を解したれば、おのれが悦にえとゞかねばとて、卑しみ果つることつゆなかりき。こ…
艚埜臚羇1941さんの感想
その 僧は 己を 忘 ずる 術を すでに 見出だしぬ。われもまた いつも いつも に あらねど 『我』を 脱離する 法を 悟れり。ちょっと だけ 悟った との 告白が なんとも 好感が もてた。