ははへ
初出:「ナップ」1931(昭和6)年11月号
書き出し
一九二九年四月十六日未明、同志吉田君はやられた。彼の家は家宅捜索——神棚は勿論、土間の隅まで掻きむしられた。翌三〇年十一月、彼の愛弟は裏の河へ落ちて死んだ。彼の家に起ったこの二つの事件は、地主の嬶共に依って次のようなデマを生み、部落内へ流布された。「神様を粗末にするから罰が当ったのだ」と。桐の葉もすっかり散り秋も漸々終ろうとする頃寒い十一月の朝だった。ささやかな葬列を囲んで俺達は山の共同墓地へ急い…