青空文庫

「冬のしぶき」の感想

冬のしぶき

ふゆのしぶき

――母親から獄中の息子に――

――ははおやからごくちゅうのむすこに――

初出:「プロレタリア文學 第一卷第一號」日本プロレタリア作家同盟、1932(昭和7)年1月

書き出し

お前が工場の帰りに買ってきてくれたこの櫛はもうあっちこっち歯がこぼれた梳いたヌケ毛の一本一本はお前がオッカサンとよばってくれるその日がまためぐってくる年月のながさをヒトツキフタツキとかぞえさせるお前からの夏のタヨリを帯にはさんでいる——六十二にもなったわたしのふしぶしはズキンズキンズキン凍れにたたかれてヒビがひろがってゆくお前がアバシリの刑務所におくられてから二年と四ヵ月くる年々の冬のはじまりから

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