青空文庫

「さらわれた兄よ」の感想

さらわれた兄よ

さらわれたあによ

――残された妹の歌――

――のこされたいもうとのうた――

初出:「戦旗」全日本無産者芸術連盟本部、1930(昭和5)年3月臨時増刊号

書き出し

まるで野中の鶏小舎を襲う野犬のように奴等は一言も吠えず踏込んで来た寝ていた兄はガバとはね起き突嗟に雨戸を押倒して奴等を踏みつけたけれど奴等は一人ではなかったすぐ躍りかかる奴があった兄は組み敷かれた兄は引っ立てられた奴等は遂に兄をかっぱらって行ってしまったのだそれは今朝の五時頃だったうす明りの今藁屋根に下る牙のような氷柱はしずかにとけて唇を指ではじくようなしめっぽいやわらかい音を立てている踏みにじら

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