まつのみさおびじんのいきうめ
01 序
01 じょ
書き出し
居士は東京に生れ東京に長ちたる者なり。僅に人事を解せしより、市川團十郎氏の演劇と三遊亭圓朝氏の談芸を好み、常に之を見、之を聞くを以て無上の楽しみと為せるが、明治九年以来当地に移住せるを以て、復両氏の技芸を見聞する能わず。只新聞雑誌の評言と、在京知人の通信と、当地の朋友が東京帰りの土産話とに依て、二氏の技芸の、歳月と共に進歩して、團十郎氏が近古歴史中の英雄豪傑に扮して、其の精神風采を摸するに奇を専ら…