青空文庫

「日を愛しむ」の感想

日を愛しむ

ひをいとしむ

初出:「群像」1961(昭和36)年1月

外村53

書き出し

妻、素子が退院し、二ヵ月振りでわが家へ帰ったのは、四月中旬のことである。曇った日で、門前の吉野桜の花はすっかり散り落ち、枝には赤い萼が点々と残っている。素子は桜の梢の方へ目を遣ってから、門を入った。玄関では、満八十二になる、私の母が背を円くして、その妻を迎えた。私は運転手と自動車から荷物を運んだ。素子は乳癌にかかった。その上、発見が遅れたため、癌は腋下から頸部にまで転移してい、二度の手術と、放射線

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