青空文庫

「鋳物工場」の感想

鋳物工場

いものこうじょう

初出:「女人芸術」1930(昭和5)年11月号

戸田豊子29

書き出し

一町外れの原っぱと玉川を区切る土堤の横が赤煉瓦の松金鋳物工場である。土堤の上を時々陽気なスピードでトラックが走った。肥桶や青物を積み上げた牛車が通った。白い埃がまき上った。土堤を降りた向側は山大に松倉、鋳物工場らしく、ハンマーの音が高らかに響き、エンジンが陽気に嘯く。松金の赤煉瓦だけが死骸の様に沈まり返っていた。髪毛一すじ程の煙りも吹き上げない。鉄管やトロッコ、レール等の既成、未成品を乱雑に投げ出

2021/10/25

ハルチロさんの感想

本作品のタイトルを見たとき、鋳物工場が舞台となった職工さんやその方々を取り巻く人々の日常生活を著された作品だと思いました。日活映画『キューポラのある町』みたいな情景を想像した訳です。ところが、二三ページ読むと、鋳物工場における労働争議が題材であることが分かりました。本作品を掲載していた「女性芸術」は、女性の労働運動を題材にした作品を掲載した雑誌であることを、やっと思い出した次第です。本作品の掲載時期は、世界恐慌の頃で、日本では昭和恐慌の時代ですから、女流作家のプロレタリア文学の最盛期だったのでしょう。作品の展開が、ある場面から次の場面へ移る過程の繋がりが、突然変わる感じがして、読み進め辛いのですが、当時の労働者の生活が分かる作品なので、プロレタリア文学に興味のある方は、ご一読下さい。

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