青空文庫

「白い蝶」の感想

白い蝶

しろいちょう

書き出し

友の家を出たのは、最早夕暮であった、秋の初旬のことで、まだ浴衣を着ていたが、海の方から吹いて来る風は、さすがに肌寒い、少し雨催の日で、空には一面に灰色の雲が覆い拡って、星の光も見えない何となく憂鬱な夕だ、四隣に燈がポツリポツリと見え初めて、人の顔などが、最早明白とは解らず、物の色が凡て黄ろくなる頃であった。友の家というのは、芝の将監橋の側であるので、豊岡町の私の家へ帰るのには、如何しても、この河岸

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