みかんどうよう
初出:田甫の上「おとぎの世界」1919(大正8)年8月
書き出し
大正八年田甫の上雁が来た、雁が来た、田甫の上に雁が来た澄み渡つた夕暮れの空に、鳴き鳴き、雁が来た親の雁は下を見い見い飛んでゆく子の雁も下を見い見い飛んでゆく親の雁は先へ先へと飛んでゆく子の雁も皆な続いて飛んで行く親の雁が首を伸して鳴き出すと子の雁も首を伸して鳴いてゐる雁は鳴き鳴き、夕暮れの空を渡つて、飛んでゆく大正九年どぶどぶ沼どぶどぶ沼に鳴いてる蛙どぶどぶ沼はぴかぴか光る子供の雁はぱつたぱつた翼…