はるさめにぬれたたび
初出:「文章世界 第六巻第五号」1911(明治44)年4月1日
書き出し
志摩から伊勢、紀伊と旅して行つた時のことが第一に思ひ出される。其時、私は糸立を着て、草鞋を穿いて歩いて行つた。浜島から長島までの辛い長い山路、其処には桃の花の咲いてゐる畑もあれば、椿の花の緑葉の中に紅く簇つてゐる漁村もあつた。五ヶ所を通つた時は、空のよく晴れた日で、渡つて行く舟の櫓の音が、湖水のやうな静かな入江に響き渡つた。蒼い顔をした、真面目な、物に感じ易い一青年が、袂に手帳を入れて、村から村、…
89fd20ae3e0fさんの感想
綺麗な文字ですね。自然主義の皆なさんはやはり風景描写が上手です。日本語が下手で……