青空文庫

「初冬の記事」の感想

初冬の記事

はつふゆのきじ

初出:「文章世界 第十一巻第十二号」1916(大正5)年12月1日

田山花袋12

書き出し

また好きな初冬が来た。今年は雨が多いので、勤めに出かける人などは困つたらうと思ふ。しかしその雨の故か、今年の紅葉の色は非常に好い。私の庭のばかりでない、何処に行つても、濃やかな紅の色彩が何とも言はれない。梧桐の葉などは、いつもならば、黒くしなびてカラ/\と一風に散つて了ふのであるが、今年はそれすら美しく黄ばんだ色を見せてゐる。山茶花が厚い深い緑葉の中に隠見してゐるさまも絵に似てゐる。雨に好し、晴に

1 / 0