ちほうしゅぎへん
(散文詩)
(さんぶんし)
書き出し
最初の時代眞青な海のうへに夏のやうでもなく、秋のやうでもなく、慥かに春の日がその華かさが更に、烈しいとでも言ひたい位の正午の光を受けて、北海道通ひの蒸汽船が二艘、遙か遠くを煙りを吐いて走つてゐる。わたしは今にその玩具のやうに小さいながら、黒びかりする船の姿と、吃水面際の赤い彩り、薄くたなびいた煙り、またはこれ等一切を取りまく、春光のもとの明色の濃い海の青を、三十何年來幻のやうに思ひ泛べられる。十五…