青空文庫

「箕輪心中」の感想

箕輪心中

みのわしんじゅう

岡本綺堂119
下町風土回顧的少年の日常歴史的人物の描写叙情的静謐

書き出し

一お米と十吉とは南向きの縁に仲よく肩をならべて、なんにも言わずに碧い空をうっとりと見あげていた。天明五年正月の門松ももう取られて、武家では具足びらき、町家では蔵びらきという十一日もきのうと過ぎた。おととしの浅間山の噴火以来、世の中が何となくさわがしくなって、江戸でも強いあらしが続く。諸国ではおそろしい飢饉の噂がある。この二、三年はまことに忌な年だったと言い暮らしているうち、暦はことしと改まって、元

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