青空文庫

「競馬興行と競馬狂の話」の感想

競馬興行と競馬狂の話

けいばこうぎょうとけいばきょうのはなし

初出:「グロテスク」1929(昭和4)年9月号

小南21

書き出し

スピードの世の中であります。此意味に於て、競馬は最も今日高速度的世相の推移を如実に表示するものであらうかと思はれます。私が年末、大の競馬狂として之に没頭しますのも、さうした点に興味を持つからでありますが、執着の結果は春秋の競馬シーズンを待ち兼ねてどうか是が同一の興趣と実感とを室内に於て味ふ工夫もがなと、好きには身を窶すで、日夜専心専一苦心を致しました。所が思ふ念力岩をも通す譬にて、私の顔よりも馬の

2019/05/21

ハルチロさんの感想

落語家の作品だからでしょうか、明治生まれの方が書かれた文章としては、読みやすく、またテンポも良いと感じる作品です。作者の名前は今や名跡となっています事を考えますと、この作品の“咄”の調子が小気味良いのも頷けます。 戦前の競馬事情や場内、券売所の様子が面白く描かれており、落語の“くすぐり”を思わせられるものです。また、競馬にのめり込む“気違い”の心理も簡潔に分析されているところも、咄家さんならではかと思いました。

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