むだいいち
書き出し
太陽はもう山の向うに落ちてしまつたが、まだあたりは明るかつた。さつきから余念もなくざぶざぶと除草器を押してゐた仁作は、東手の畦につくと、ほつと一息ついて立停つた。さすがに、体はもうぐつたりと疲れ切つてゐた。彼は水田の中に立つたまま、腰から煙管を取り出して一服つけながら、ずつと遠くまで続いた青田を見渡してみた。どの田圃にもまだ女や男が除草器を押しながら行つたり来たりしてゐる。しかしもうみな疲れが出て…
19双之川喜41さんの感想
「なんぞ虫でも食うたんやろ、 痛うも痒うもあれへん」 これが 著者の 人生が 暗転する 兆しであったと思われる。 達意の文章であり 川端康成が 肩入れ していたというのも さもありなんと 感じた。