えきふにっき
初出:「新小説」1907(明治40)年12月
書き出し
一私は十八歳、他人は一生の春というこの若い盛りを、これはまた何として情ない姿だろう、項垂れてじっと考えながら、多摩川砂利の敷いてある線路を私はプラットホームの方へ歩いたが、今さらのように自分の着ている小倉の洋服の脂垢に見る影もなく穢れたのが眼につく、私は今遠方シグナルの信号燈をかけに行ってその戻りである。目黒の停車場は、行人坂に近い夕日が岡を横に断ち切って、大崎村に出るまで狭い長い掘割になっている…