すずりばこととけい
初出:「金の星」金の星社、1926(大正15)年1月
書き出し
石之助が机にむかつて、算術をかんがへてゐますと、となりの金さんが来て、「佐太さん。石さんはよく勉強するね。きつと硯箱になりますよ。」と、言ひました。すると佐太夫は、「いいえ。石之助はとても硯箱にはなれませんよ。硯箱になるのは、あんたの所の茂丸さんですよ。」と、申しました。ふすまのこちらで、お父さまと金さんの話をきいてゐた石之助は、へんなことをいふものだなあと思ひました。しばらくして、金さんが帰つた…