おどるちへいせん
10 長靴の春
10 ながぐつのはる
書き出し
1反照電熱機のような、香橙色の真ん円な夕陽を、地中海が受け取って飲み込んだ。同時に、いろいろの鳥が一せいに鳴き出して、白楊の林が急に寒くなった。私は、それらの現象を、すこしも自分に関係のないものとして、待合室の窓から眺めていた。その窓硝子には、若い春の外気が、繊細な花模様を咲かせていた。そこは、ふらんすと伊太利の国境駅のヴァンテミイユだった。小停車場は、埃塵をかぶって白かった。そして、油灯のくすぶ…