青空文庫

「紅梅」の感想

紅梅

こうばい

作家の日常季節の移ろい家族不和自然と人間の冥通叙情的憂鬱静謐

書き出し

私の庭に早咲の紅梅が一本ある。東と南の光を受けて、北を建物にふさがれてゐるためか、十二月の半からぼつぼつ蕾を破つてゐる。色は桃のやうに濃くも無く、白い磁器の上に臙脂を薄く融かしたやうな明るさと可憐さとを持つた紅である。私は歳末から此の歳端へかけて快晴がつづくので、毎日一度は庭へ下りて、霜解のあとの芝生を踏んで歩き、友人を訪ふやうな心持で落葉した木木を見上げ、最後に此の紅梅の傍へ來て暫く立つてゐる。

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