青空文庫

「時計」の感想

時計

とけい

初出:「ペン」1937(昭和12)年2月号

回顧的家族不和異国情緒自己認識内省的静謐

書き出し

私が女学校を出た年の秋ごろであったと思う。父が私に一つ時計を買ってくれた。生れてはじめての時計であった。ウォルサムの銀の片側でその時分腕時計というのはなかったから円くて平たい小型の懐中時計である。私は、それに黒いリボンをつけ、大変大切に愛してもっていた。袴をはいたときは、袴の紐にその黒いリボンをからみつけて。或る日、急に八重洲町の事務所にいる父に会わなければならない用が出来た。どういう道順であった

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