青空文庫

「東京へ近づく一時間」の感想

東京へ近づく一時間

とうきょうへちかづくいちじかん

初出:「文学評論」1935(昭和10)年3月号

下層階級の描写季節の移ろい文明開化都市の異化分析的回顧的静謐

書き出し

近くには黄色く根っ株の枯れた田圃と桑畑、遠くにはあっちこっちに木立と森。走りながら単調な窓外の景色は、時々近く曇天の下に吹きつけられて来る白い煙の千切れに遮られる。スチームのとおっている汽車の中はどっちかというと閑散で、くくられた桑の細い枯枝に一瞬煙が白く絡んで飛び去る速い眺めは冬のひろい寒さを感じさせた。ひどく古風な短いインバネスをはおり、茶色の帽子をかぶった百姓らしい頬骨の四十男が居睡りをして

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