青空文庫

「北へ行く」の感想

北へ行く

きたへいく

初出:「若草」1927(昭和2)年8月号

歴史的背景社会疎外自己認識内省的回顧的

書き出し

斜向いの座席に、一人がっしりした骨組みの五十ばかりの農夫が居睡りをしていたが、宇都宮で目を醒した。ステイションの名を呼ぶ声や、乗客のざわめきで、眠りを醒されたという工合だ。窓の方を向いて窮屈に胡座をくんでいた脚を下駄の上におろしながら、精力的な伸びをした。二人づれの国学院の学生がその時入って来て、座席を物色した。車内は九分通り満員だ。二人はその農夫の前えに並んでかけた。農夫はやがて列車が動き出すと

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