青空文庫

「氷雨」の感想

氷雨

ひさめ

葉山嘉樹17
下層階級の描写内省孤絶貧困内省的憂鬱静謐

書き出し

一暗くなつて来た。十間許り下流で釣つてゐる男の子の姿も、夕暗に輪廓がぼやけて来た。女の子は堤の上で遊んでゐたが、さつき、「お父さん、雨が降つて来たよ」と、私に知らせに来た。「どこかで雨を避けておいで」と返事をしたまま、私は魚を釣り続けてゐたのだが、堤には小さな胡桃の木以外には生えてゐなかつた。それも秋も深んだ今では、すつかり葉を落してしまつて、裸で立つてゐるのだつた。兄の方が、釣り竿を堤防の石垣の

2023/05/22

中央原理さんの感想

 1937年、日中戦争勃発からまだ数ヶ月の頃の、寂れた村のある親子の話だが、作者の投影と見て間違いないだろう。  戦争の暗い影がすでに空を覆い、父親は半年も生と死について考えている。抑うつ状態と言ってよいだろう父に対し子どもはその死臭を感じ取り、なんとなく余所余所しいところがある。それでも、暗雲に覆い尽くされた父親の手を娘が引っ張るとき、父親の頭に火花が散る。生命の光を確かに感じ取ってもしかし、それは一瞬で、父親の生命力を再び駆動する力足り得ない。  ただ暗い話である。戦争の前には、子どもという存在でさえ希望足り得ない。これが開戦して一年も経たないころなのだから、終戦までにどれほどの悲劇があったかは、考えたくないほどだ。小説などには何の力も無い…。

2015/11/22

a5ac6a3c331fさんの感想

貧困のなか、明日への不安をいだきながらも 子供たちへの愛情が溢れている。 父親の辛さ、不甲斐なさが 正直に つづられている。 子供の言葉や 言葉にしない行動が たくましかったり、切なかったりします。

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