青空文庫

「くろがね天狗」の感想

くろがね天狗

くろがねてんぐ

初出:「逓信協会雑誌」1936(昭和11)年10月

海野十三23
下町風土探偵小説時代劇叙情的緊迫

書き出し

師走三日岡引虎松は、師走の三日をことのほか忌み嫌った。師走の三日といえば、一年のうちに、僅か一日しかない日であるのに、虎松にとってはこれほど苦痛な日は、ほかに無かったのであった。そのわけは、旗本の国賀帯刀の前に必ず伺候しなければならぬ約束があったからである。その年も、まちがいなく師走に入って、三日という日が来た。その頃、この江戸には夜な夜な不可解なる辻斬が現れて、まるで奉行も与力もないもののように

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