青空文庫

「ヒルミ夫人の冷蔵鞄」の感想

ヒルミ夫人の冷蔵鞄

ヒルミふじんのれいぞうかばん

初出:「科学ペン」三省堂、1937(昭和12)年7月

海野十三38
SF的想像力学問的考察怪奇都市の異化緊張静謐

書き出し

或る靄のふかい朝——僕はカメラを頸にかけて、幅のひろい高橋のたもとに立っていた。朝靄のなかに、見上げるような高橋が、女の胸のようなゆるやかな曲線を描いて、眼界を区切っていた。組たてられた鉄橋のビームは、じっとりと水滴に濡れていた。橋を越えた彼方には、同じ形をした倉庫の灰色の壁が無言のまま向きあっていたが、途中から靄のなかに融けこんで、いつものようにその遠い端までは見えない。気象台の予報はうまくあた

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