青空文庫

「その源」の感想

その源

そのみなもと

初出:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社、1980(昭和55)年6月20日初版発行

文明開化社会疎外自己認識分析的憂鬱

書き出し

二三日前の夜、おそく小田急に乗った。割合にすいていて、珍しく腰をおろした。隣りに大柄な壮年の男のひとがいて、書類鞄から出した本を、しきりに調べている。その隣りの席に黒い外套に白いマフラーをつけ、縁なしの眼鏡をかけた三十歳がらみの洋装の婦人がいて、好奇心を面にあらわし、男のひとの本の頁を横から見ている。その様子に、何か目をひくものがあった。すると発車間際になって、一人の紳士が急いで乗りこんで来た。「

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