読書八境
どくしょはっきょう
初出:不明
約8分
cdd6f53e9284さんの感想
え~っ、こういう考え方する人って本当にいるのかと、逆に感心した。
読書は、読む場所によって感興がそれぞれ異なっていて、とても味わい深いものだとおっしゃる。
こんな感じだ。
«人の気分はその境遇で異なるのみならず、四季朝夕その候その時異にすればまた同じきを得ない。
従って読書の味もまた異ならざるを得ないのである。
いま境により書味の異なるものを案じ、八目を選び、これを読書八境という»
ということで、読書八目なるものの内訳は以下のとおり
·旅行中(これは、まあ、あるかもしれないが、わざわざ旅行に来たのだから景色見てろよと、おれなら言うな)
·酔っぱらったあと(よりにもよって、そんな時に読書なんかしなくてもねえ、第一頭に入らないし)
·喪中(取り込み中に読書なんかしてたら叔父さんにどやされるぞ)、
·獄中(そんなわけあるか!)、
·陣営(戦争はまずいっしょ、まず戦争を起こさないところから考えたいよねえ)
·入院中(これはそうかも。でも深刻な病気だったら呑気に読書なんかしてられないけどね)
·僧院(許されるなら行きたいくらいだが、今どきのことだから嫌な顔をされないか心配だ)
·林泉(静かな大自然の中での読書、夢のようなシチュエーションだけど今どき人気のない所に一人きりでいると犯罪に巻き込まれる危険の方が大きいぞ!)
とまあこんな感じなのだが、整理しながら考えた、
「なんで自分の部屋で静かに読書してはいけないのか、むしろ、そちらの方を聞きたいくらいだ」
自分などは、旅や飲み会や葬式や刑務所や戦争や病気や出家や自然なんかよりも、それらすべてを不義理覚悟で御断りして読書を優先するタイプなので、そもそもこうしたシチュエーションを心配する必要など、ハナからない。
それに、最も重要なことは、どこで読むかよりも「何を読むかだ」と思っているので、スタートからこの随筆に共感できるものがまったくないと思いかけていたときの最後の一節がグサリときた。
こうだ。
«読書によって得られないものとてはない。妻子珍宝富貴利達、皆書中にあり。すなわち読書は万能である。この詩意をもって心とすれば、読書ほど楽しいものはないともいえる»
ほんとだな! というのが、自分の正直な読後感。
読書のなかにすべてがあるんだって?
もしそれが「すべて」だったら、その「すべて」というのは、随分と観念的で単純なものだなあと呆れ、逆に感心したくらいだ。
市島春城という人は、衆議院議員から早稲田大学初代図書館長に転身した人だそうだ。
ふむふむ、政治家ならこれくらいなことは言うかもと納得した次第。